【看護学生必見!】肺がんのアセスメントから看護計画まで徹底解説!

国試・実習対策

こんにちは!現役看護師のうみです!今回は現役で呼吸器内科病棟にいる私が肺がんの患者さんに対する看護計画を立案していきます。最後に事例を用いて実際にアセスメントをして看護計画をたてていますので気になる人は目次から飛ばしてみてください♪

またこの記事を書くにあたり書籍などで調べて正確な情報を提供するように心がけておりますが医学の世界は常に新しい情報が出てきますので情報が古くなっていたり、誤った情報になることがありますので参考までにとどめてくださいね。 


肺がんの基礎知識について

ここでは肺がんの基礎知識について学習していきます。難しい話のあるので自分で学習済みの人や看護計画だけ見たい人は読み飛ばしOKです!

肺がんの概念・定義

肺がんとは気管・気管支・肺から発生する悪性腫瘍の総称で気管支から肺胞の間に発生した原発性肺がんと転移性肺がんがあります。

がんの罹患者数は男性が多く、男女ともに罹患率3位(2020年現在)となっています。死亡者数の順位は男性は1位、女性は2位となっており男女合わせるとがん死亡者数では1位となっています。

原因

肺がんの危険因子としては喫煙、閉塞性肺疾患(肺気腫、慢性気管支炎)、職業的暴露(アスベスト、ヒ素、クロム、ニッケルなど)がある。

喫煙が身体に与える影響の目安としてブリンクマン指数やpack-yearsが用いられる

ブリンクマン指数=1日あたりの平均喫煙本数×喫煙本数

ブリンクマン指数400以上で肺がんが発生しやすく、600以上は肺がんの高度危険群といわれている
pack-years=(1日の喫煙本数÷20本)×喫煙年数=1日の喫煙箱数×喫煙年数

pack-years 30以上に喫煙者は肺がんの高リスク群といわれている

肺がんの分類

・肺がんは小細胞がん、非小細胞がん(腺がん、扁平上皮がん、大細胞がん)、その他に分類される。

・がんの進展度の分類にはT(=腫瘍の大きさと浸潤)、N(=リンパ節転移)、M(=遠隔転移)因子で病期分類を行うTNM分類があります!

・小細胞がんには限局型(LD)進展型(ED)に分けられる


がんのTNM分類と小細胞がんの病期分類を簡単に(実習で困らない程度)にまとめてみました!参考までにご覧ください!

がんのTNM分類

分類記号説明
原発腫瘍T腫瘍の大きさや浸潤範囲を示す
リンパ節転移Nリンパ節への転移の有無と範囲を示す
遠隔転移M遠隔臓器への転移の有無を示す

T分類の詳細

分類意味
T0原発腫瘍を認めない
Tis上皮内がん(非浸潤がん)
T1-T4腫瘍の大きさや浸潤の程度を示す(数字が大きいほど進行)

N分類の詳細

分類意味
N0リンパ節転移なし
N1-N3リンパ節転移の範囲や数を示す(数字が大きいほど広範囲)

M分類の詳細

分類意味
M0遠隔転移なし
M1遠隔転移あり

小細胞がんの病期分類

病期分類名説明
限局型Limited disease (LD)がんが片側の肺およびその周囲のリンパ節に限局しており、放射線治療で治療可能な範囲
進展型Extensive disease(ED)がんが胸部外または片側の肺を超えて広がり、遠隔転移がある状態

非小細胞がん

腺がん

発生頻度 50% | 好発部位 末梢肺野 | 喫煙との関連 あり | 性別 女性に多い |  進行速度 やや速い

扁平上皮癌:

発生頻度 30% | 好発部位 肺門 | 喫煙との関連 強い | 性別 男性に多い |     進行速度 比較的遅い |

大細胞がん:

発生頻度 5~10% | 好発部位 末梢肺野 | 喫煙との関連 あり | 性別 やや男性に多い|進行速度 やや速い |

・小細胞がん

発生頻度 5~10% | 好発部位 肺門 | 喫煙との関連 強い | 性別 男性に多い|   進行速度 非常に速い |

症状について解説!

・肺がんに特異的(=この症状が出てるから肺がん!と診断できる)症状はないが、咳嗽、喀痰、血痰、発熱、呼吸困難、胸痛などの呼吸器症状のほか、体重減少、全身倦怠感、食欲低下があります。

・腫瘍の進展(=隣接している組織内に侵入し広がること)による症状として、嗄声、パンコースト症候群、上大静脈症候群、ホルネル徴候などがある。

・遠隔転移による症状として、脳転移(転移のことをメタということもある)による神経症状、骨転移による疼痛や病的骨折、脊髄・硬膜外転移による運動麻痺や知覚障害がある。

・小細胞がんは種々のホルモンを産生するため副腎皮質刺激ホルモンによるクッシング症候群、抗利尿ホルモンによる抗利尿ホルモン不適合症候群を呈することがあります。

腫瘍の進展による症状

嗄声縦郭リンパ節転移により反回神経麻痺を生じる
パンコースト症候群肺尖部に発生した腫瘍が胸膜を超えて腕神経叢や肋間神経に浸潤することにより方や腕の痛みやしびれを生じる。
上大静脈症候群腫瘍が上大静脈や腕頭静脈を圧迫することにより、顔面・上肢の腫脹や胸壁の静脈の怒張を呈する
ホルネル徴候腫瘍の頸部交換神経節への浸潤によって浸潤側の縮瞳、眼瞼下垂、眼球陥没および発汗低下を呈する

肺がんで行われる検査

  • 胸部X線検査
  • 胸部CT検査
  • 喀痰細胞診
  • 気管支鏡検査
  • CTガイド下針生検
  • 胸腔鏡検査
  • 腫瘍マーカー

肺がんの治療について解説!

病期・組織型による治療方法の違い

治療方針は組織型・特徴、病期、身体状況(PS)、臓器機能、合併症、年齢を考慮して決定する。

治療方法は手術療法、放射線療法、薬物治療があり非小細胞がんと小細胞がんで分けて考えます。非小細胞がんの治療は主に手術療法で、術後の再発防止のために化学療法が併用されることもあります。手術が困難と判断された場合は放射線治療、さらに進行した場合は薬物療法を中心に行われます。    

小細胞がんの場合は手術が可能な早期に発見されることは少ないため化学療法が中心に行われる。

実際に事例を用いてアセスメントしてみた!  収集する情報例あり!

この章ではゴードンの機能的健康パターンを用いて収集する情報とアセスメントしていきます!

実習ですぐに記録に生かせるように作成しているので最後までご覧ください!

事例

患者情報:Aさん 68歳 男性

【身長・体重】170㎝、53Kg  

【職業】   自営業  

【家族・背景】妻(65歳 主婦)と二人暮らし。同県内に息子35歳と娘33歳が住んでいる。      

【主訴】   労作時の呼吸苦                                              

【主要症状】呼吸困難、倦怠感、腰痛

【病名】  肺がん(腺がん)

【現病歴】数年前に胸部X線にて異常陰影を指摘され検査の結果、肺がん(腺がん)と診断された。化学療法と放射線治療の併用療法を受けて一時的に腫瘍の縮小を認めたが、腫瘍の増大、浸潤、骨転移(腰椎)を認め新たに化学療法と放射線治療を実施していた。外来フォローで受診した際に労作時呼吸困難感の増強と腰痛に対しロキソニンが処方されていたが効果がないとのことで症状コントロールのために入院となった。

コードンの機能別健康パターンを用いて解説!

ここではゴードンの機能別健康パターンを用いて収集する情報とアセスメントに必要な視点を前項の事例を用いて解説していきます。ヘンダーソンの分類を使っている方や学校独自のアセスメントシートを使っている方も参考になる内容になっておりますのでぜひご覧くださいね!

パターン収集する情報アセスメントの視点  
健康知覚-健康理解  ●現病歴
・発症時期
・症状の経過・転移の有無
・治療の経過
●既往歴
・ほかの呼吸器疾患の有無(間質性肺炎、結核、慢性閉塞性肺疾患)
●職業歴
・粉塵などの暴露歴
・現在の職業
●生活習慣
・喫煙歴(受動喫煙歴)
●患者・家族の希望
肺がんは特異的な症状はなく遠隔転移や局所の進展性がはやく発見されたときには手術による切除が不能であることも多いため、定期健診を受け早期発見をする必要がある。どういう経緯で肺がんが発見されたかを確認する必要あり。
肺がんは60歳以上の男性に好発する。患者とその家族の希望と支援する力、患者の持つ力などすべてを全体的にとらえQOLを考えた支援が必要になる。
栄養-代謝●栄養状態
・食事摂取内容・量、食欲
・身長・体重、体重の変動
・口腔、皮膚、粘膜の状態
・検査データ(TP、Alb、Hb)
・水分摂取量
・悪心、嘔吐
●代謝状態
・代謝性疾患の既往歴
・検査データ(血糖値、HbA1c、肝臓)
・腎機能(BUN、Cr、CCR)
●使用する化学療法の種類と使用量
手術療法を選択する場合は全身麻酔下で行われ、術後の早期回復と感染予防のために術前の栄養状態など全身状態の評価が必要。
放射線治療の場合は照射量が20Gyを超えたころから嚥下障害が出現する可能性がある。
肺がんにたいする化学療法は多剤併用がたのために薬剤による副作用、食欲不振や悪心によって食事摂取量が低下する可能性あります。
排泄●排便
・排泄回数、性状、便通異常
・投薬(下剤の使用や座薬など)を使用しているか
●排尿
・排尿回数、性状、排尿異常
●使用する化学療法の種類(ビンアルカロイド系)
化学療法の副作用として便秘をきたす可能性がある。また疼痛や苦痛のコントロールとして麻薬を内服していることもあり、麻薬の副作用としての便秘が出現する可能性もある。
活動ー運動    ●入院前(健康な時のADL)
・活動内容、活動範囲
・今後の活動への希望
●肺がんの進行期
・部位、組織型、転移の有無、症状
●呼吸器症状
・咳嗽・喀痰の有無
・痰の量・性状
・喘鳴・呼吸困難
・SpO2低下の有無
・血液ガスデータ
・呼吸音
●既往歴
・間質性肺炎、気管支喘息、結核、COPD
肺がんが進行すると呼吸苦、酸素化の悪化による酸素投与、浸潤による疼痛から活動性が低下しADLの低下をもたらす。
手術療法の場合も術後は創部疼痛や胸腔ドレーンの挿入によりADLの制限あり
睡眠ー休息●睡眠・休息パターン
・睡眠・休息時間
・入眠状況と満足感
・睡眠薬の有無
●睡眠障害をもたらす因子の有無
・死への恐怖、痛み、不安
・環境因子
肺がんは致死的な疾患のため死への不安や手術への不安から睡眠障害をもたらす可能性がある
また疼痛からも睡眠障害につながる可能性あり
認知-知覚●心理状況
・不安
●病態・疾患についての知識
・受容の状態、検査の理解、治療の理解
・医師、薬剤師からの説明内容
・告知の希望、予後・生命予後についての説明希望
肺がんは初期症状が少ない疾患のため疾患を認識しにくい。なおかつ侵襲的な検査や病名の告知によって不安が生じやすい。
患者家族の理解についても確認していく必要がある。
自己認知ー自己概念●否定的な自己の捉えかた
・落胆を表すことば
・悲観的な見方
・言葉による表現の減少
●コミュニケーション不足
・会話を避ける
・相手を見ない
・感情の減退
・自発性低下
肺がんの受容ができずに自己価値を低く感じたり、悲観的になる可能性がある。
高齢者では肺がんの症状や治療による副作用によって肉体的な機能低下やADLの低下をもたらしやすく自尊感情も低下しやすい
役割ー関係●家族関係
・同居者の有無
・キーパーソンはだれか
・介助者はだれか
・患者家族の面会状況
●職業上の役割
・仕事は何をしているか
・休むことへの影響
・経済面への影響
・仕事を継続するためにどんな治療を希望するか
●社会的役割・責任
・家庭での役割と活動内容
・地域とのかかわり
・入院による影響
肺がんでは治療期間が長期に及び、家庭、地域での役割が障害されやすい。また退院してもすぐに入院が必要になったり、ADLの低下から退院後も何かしらの支援が必要にあることが多いため役割や退院後の支援状況なども確認する必要がある。
セクシュアリティー
生殖
●生殖歴、生殖段階
・子供の有無
・本人とパートナーの希望
若年期、壮年期の患者では生殖機能が障害されパートナーとの人生設計を脅かしやすい
コーピングー
ストレス耐性
●ストレスへの対処行動
・肺がん、治療についてどう受け止めているか
・ストレス対処方法を持っているか
・これまでストレスに対しどう対処してきたか
●社会的資源はあるか
・精神的、物的サポートはあるか
・家族はストレスへ対応する力を持っているか
肺がんでは治療が長期に及ぶことや死亡率が高い疾患であるため患者・家族にとっては大きなストレスになる。ストレスに対する対処行動を獲得できていないと不安が増大したり治療の継続に影響する
価値ー信念●価値観・信念
・人生、健康についての希望
・これからどのように生きたいと望んでいるか
●スピリチュアル
・信仰を持っているか
・大切にしていることはなにか
・困難が生じたときに助けになるものはあるか
●心の支えになるものはあるか
・人的な支え
・環境:ベッドサイドにあるもの、大切
何度も前述のとおり肺がんは「死」を意識する疾患であり、患者の人生を変容させる。そのため信仰や大切にしているものは闘病生活におおきな影響を与える。

看護問題について解説!例あり

ここまでアセスメントすることができたら看護計画を立案していきます。ご存じのとおり看護師は毎日同じ患者さんを担当するわけではありません。複数の看護師が一定の看護を提供するために看護計画を立案していきます。

#1 疼痛、胸腔ドレーン挿入に関連した非効率気道浄化

まずは肺がんでは咳嗽や喀痰量の増加などが出現する。疼痛や胸腔ドレーンによる違和感から効果的な咳嗽ができず痰が貯留しやすい状態になることがあります。痰の貯留は無気肺をもたらし呼吸困難感の増大や酸素化の悪化につながります。

#2肺がんによる神経浸潤や骨転移、胸腔ドレーン挿入に関連した急性疼痛

進行期の肺がんは神経浸潤や骨転移による疼痛が生じやすいことや、胸腔ドレーン挿入による痛みが出現し苦痛が生じやすい。痛みに対しては鎮痛薬や麻薬を使用し疼痛緩和を行っていく必要がある。また看護師は薬剤の効果の評価、副作用の出現状況を評価していく必要がある。

#3 化学療法による易感染状態に関連した感染症罹患リスク状態

化学療法では治療開始後、10日~2週間から骨髄抑制が起こることが多いです。骨時抑制が起こると易感染状態になります。感染症を起こすと治療が中断されたり敗血症をおこすと致命的です。化学療法は退院後も外来で継続して行うことも多いので患者本人の知識獲得が必要になる。

#4 肺がんによる健康状態の変化、治療の副作用に関連した不安がある

肺がんは病期に応じ様々な治療方法があり、治療も長期にわたる。それに伴い、疾患に関連した症状や治療の副作用から様々な不安が生じる。壮年期では経済面などの不安、高齢者や独居であれば今後の生活への不安が生じやすい。MSWへの情報提供を行うことや個別性を考えた対応が必要がある。

最後に伝えたいこと

実習では記録に追われ睡眠時間が確保できないことがありますが、自分の健康が一番大切です!書籍や参考書、当ブログを参考にして効率的に記録を進めてくださいね♪それでは実習頑張ってください!

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